「王宮守門将交代儀式」をやっている人達を襲う年一度の災難とは『おぼえ直し』
実は、一年で一番ソウル市民が寄ってくる人気イベントだったりする
この仕事。
気をつけなければならないのは、1年に1度必ずやってくる、お正月の『おぼえ直し』です。
朝鮮王朝時代、守門軍(スムングン)の交代儀式は、陰陽五行に則り、毎年方式が変わりました。
現在の守門軍(スムングン)の交代儀式のやり方も、やたらと正確さにこだわりすぎる『専門家』によって、毎年方式が変更されます。
毎年1月1日、それも第1回めの11:00は、景福宮(キョンボックン)、昌徳宮(チャンドックン)、徳寿宮(トクスグン)は、その年最初の「王宮守門将交代儀式」なのですが、第1回目はさすがに、まともにできるはずもないのはいうまでもなく。
普段はまったくこんなことには興味関心を示さない明らかにソウル市民であろう韓国人ギャラリーも、どこからともなく集まってきて、大盛況というのだからタチが悪い。
まことに不謹慎ながら、リアル・コメディー
皆一斉に右を向かなければいけないのに左を向いてしまう人。
皆一斉に前を向かなければいけないのに後ろを向いてしまう人。
先頭の一人が逆方向に動いてしまうから、その後ろ一列が全員逆方向に動いて、隣の列と衝突してしまったり。
システマティックでドライなものを好む傾向の強い、きょうびの韓国人の若者は、こういう展開になってくると、一気にモチベーションが下がってきてしまい、ミスが際限なく拡大していくことになります。
ギャラリーからも
「NG!!」
「やり直し!!」
「基準!!(日本の「前へならえ」と同じ意味の号令)」
「正面を向け!!」
と、軍隊の初年兵訓練よろしく、次ぎ次ぎと野次が飛びます。
そもそも 「王宮守門将交代儀式」をやるというお仕事とは
朝鮮時代の王宮で門の開閉や警備を担った守門軍の交代儀式を、専門家による歴史考証を通じて再現したのが「王宮守門将交代儀式」です。
ソウルの中心部にある人気観光スポット・景福宮(キョンボックン)、昌徳宮(チャンドックン)、徳寿宮(トクスグン)などで行われており、華やかさと格調ある雰囲気で海外からの旅行者に人気のイベントです。
若い韓国人は、見かけによらず、いわゆる日本的なシステマティックでドライなものを好む傾向にあります。
ドロドロとした義理と人情の渦巻く田舎より、人間同士の関係が希薄で、金銭のやりとりですべてがまわる、都会的なソウルを好む傾向が強いようです。
王宮守門将交代儀式のアルバイトが好まれるのも、システマティックでドライな仕事だからという側面があります。
確かに、毎回変わらぬ一糸乱れぬ所作。
それをいかにびしっと決めるか。
若い韓国人は、こういうことに長けています。
万事いい加減という韓国人の国際的なイメージとは裏腹に。
この日、2012年1月1日午前11時。
案の定、収拾がつかないぐらい隊列が乱れてしまって、皆てんで勝手に写真の位置まで歩いて移動していたら、門の上にいる人がブチ切れて、「コラーッ、しっかりやれ、しっかり」と怒鳴っておりました。動かねえ人にグダグダ言われたくないよと、守門軍は愚痴っておりましたが。ちなみに気温はマイナス15℃ぐらいなので、門の上にいる人は、風当たりも強いせいで、半端ではなく寒いらしい。それで、とっとと終わって帰りたいのが本音なのだけれど、下では守門軍が混乱して、なかなか終わらなくて、ブチ切れるという構図らしい。
ギャラリーはこんなに近い位置にいるんで、間違えるとすぐにわかるし、野次は容赦なく守門軍役に突き刺さる。旗と旗、太鼓と太鼓がぶつかったら、初めて見る外国人でも間違ったのはわかる。
景福宮を案内する役の韓服姿の女の子諸氏、あんたらも、立派な野次馬じゃ
気が付けば、景福宮を案内する役の韓服姿の女の子達も見に来て、
「あ~~~ぁ。」
ってな具合。
いつも思うんだけど、さも心配しているような表情を作りながら、仕事を放り出して見に来るあんたらも、ワタシらとおんなじ、立派な野次馬やんけ。
それでも、1月3日ぐらいには、まがりなりにもさまになってくるのだからたいしたものです。