大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

運転技師様

韓国では、運転士と学校の先生は『一応、偉い』

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この運転技師様はプロ意識の高い非常に優秀な人でした。
大抵は気難しくて威張っている人が多く、まず滅多に気さくな運転技師様はいません。

日本語に翻訳すると変になる韓国語の中でも有名なものに
「○○先生様(学校の先生をこう呼ぶ)」
「運転技師様(バスやタクシーの運転手をこう呼ぶ)」
というのがあります。
先生も技師も敬称なのに、さらに『様』という敬称を重ねるから変なのです。

 

運転士と学校の先生は怒らせると怖い職業の代表格『だった』(厳密には過去の話)

敬称を重ねるという韓国語の用法は、現代になって現れた特殊な用法で、韓国人の国語研究家も非常に不可解だと述べているほどの変わった習慣です。
変わってはいるけれど、この二つは、怒らせると怖い職業の代表格だったという歴史があったという事情がありました。

 

運転士と学校の先生を決して尊敬しているわけではないというところがミソ

運転士と学校の先生を決して尊敬しているわけではないというのは、韓国独立の英雄、金九先生を「金九先生様」と言うと明らかに失礼になるということからもわかります。
「金九先生様」と言うと、まるで中学校の国語の先生みたいな感じに聞こえます。
英雄を中学校の先生と同列に扱うと失礼になる、ここに、この不思議な習慣を読み解く鍵があります。

 

背景にあるのは職業差別という韓国伝統の病

韓国では、露骨に職業の貴賤があって、主に頭脳労働者は尊い職業で、肉体労働者は卑しい職業だという認識が暗黙のうちにあります。
最近では、頭脳労働者の過労死が頻発しているので、職業差別は随分緩和されてきていますが、それでも、新卒者の就職の場面では根強く職業差別が残っています。

うどん屋の息子が、家業を継ぎたいと言ったら、親が
「なんて親不孝な息子なのか」
と激怒したという話もよく聞くのですが、ここにも職業の貴賤の話があって、うどん屋は卑しい職業なので、せめて子供だけは尊い職業に就いて欲しいと思う親心があるという話です。

 

運転士と学校の先生も、基本的には嫌われる職業なのだが・・・

ところで、運転士も学校の先生も、特別の免許・資格を持っていなければなれない職業。
科挙の伝統のある韓国では、これが曲者です。
科挙に合格すれば、出身家系に関わらず貴族となり、王宮に召抱えられる制度のあった韓国のことです。
貴族でも科挙に合格できなければ没落したのが韓国の伝統ですが。

第一種運転免許(日本の第二種運転免許と同じ営業用運転免許で、これは非常に合格が難しい)、教員免許(これも過激な大学入試を勝ち進む必要がある)と科挙とどう違うのか、韓国人の中では、説明が非常に難しいのです。
運転士も教員も、間違っても馬鹿ができる仕事ではありません。
運転士も学校の先生も、そこのところを鼻にかけ、威張っている人が多いから困るのです。
とりあえず形だけは尊敬はいたしましょうという方便として「先生様」「運転技師様」という言い方が定着したような気がします。