大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

韓尚宮(ハン サングン)

大長今』の主人公、長今(チャングム)の料理の師匠である韓尚宮は、実は20世紀に実在した人

口が悪く、悪人面で、怖い人だったが、史上最高の料理人として記録されている

時代考証がぶっとんでいることで、有名な人気テレビドラマ、『大長今』。
主人公、長今(チャングム)の料理の師匠である韓尚宮は、実は20世紀に実在した人でした。
韓尚宮の役作りにあたって、実在の韓尚宮をモデルにしています。

本物の韓尚宮は、朝鮮王朝最後の正五品(女官最高位)厨房尚宮で、本名は韓熙順(ハン ヒスン)といいます。
1972年まで生きていたので、頭の毛のうすい、ガリガリに痩せた、変わったおばあさんとして記憶している人もたくさんいます。

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本物の韓尚宮(左:現役時代、右:晩年)

 

大長今』の韓尚宮を、本物同様、口が悪く、悪人面で怖い人にするのに、監督はなかなか苦労したらしい

韓国語版の『大長今』の韓尚宮は、口が悪く、悪人面で怖い人なんですが、本物の韓尚宮を知っている人がみたら、あまりに本物そっくりだったんで、爆笑ものだったのだそうです。
(日本語の吹き替えでは、NHKの教育的配慮により、女優の梁美京氏とは似ても似つかぬやさしい感じの人があてられ、台詞もマイルドに変更されている)

大長今』の配役は、本物の韓尚宮の一癖も二癖もある性格が軸になって組み立てられているというもっぱらの噂です。

当初、韓尚宮は、本業が美容サロンの社長で、ソウル江南地方特有の優しい言葉遣いや上品な仕草で、当初、宮廷人としてぴったりということで、甄 美里(キョン ミリ)氏があてられていたそうです。

しかし、リサーチが進むと、本物の韓尚宮が口が悪く、悪人面で怖い人で、一癖も二癖もある性格ということがわかってくると、状況は一変。

たまたま、悪の崔尚宮役に決定していた梁美京(ヤン ミギョン)氏は、なにかと所属プロダクションとゴタゴタしている一癖も二癖もある困った人であり、声にドスが効いた釜山なまりがある人だったので、この人の方が韓尚宮にぴったりじゃないかということになって、崔尚宮と韓尚宮の配役を交換してしまうことになりました。

 

長今役の李 英愛(イ ヨンエ)氏は、清純な主人公を精神的にいたぶるサイコパスの演技に定評あり

ちなみに、長今(チャングム)役の李 英愛(イ ヨンエ)氏は、サイコ系悪役女優として絶賛売り出し中で、何の悪意もなく、真面目に一途に、清純な主人公を心理的にいじめ抜いて、恐怖のどん底に追い詰めていくサイコパス演技に定評がありました。

なんと、長今、韓尚宮揃って、主役をベテラン悪役女優が固めるという仰天の配役となったのでした。

 

対する崔尚宮側は清純派女優で固まってしまう

ちなみに、クミョン役の洪利奈(ホン リナ)は鉄壁の清純派女優。

悪役の崔尚宮側が、悪役ド素人の清純派女優で固まってしまうという、これまた仰天の配役となったのでした。

 

大長今』は、いまひとつ悪役が板についていない崔尚宮とクミョンを、ベテランの韓尚宮とチャングムが主役であることをいいことに追い詰めるという倒錯的ストーリー

大長今』は、いまひとつ悪役が板についていない崔尚宮とクミョンを、ベテラン悪役女優イ ヨンエ演ずるチャングムが、師匠の韓尚宮といっしょになって、主役であることをいいことに、クミョンが愛するミン ジョンホを奪い取った挙句、崔尚宮ともども、心理的にいじめ抜いて追い詰めていくというストーリーに仕上がっているというわけです。
(NHKの教育的配慮により、韓国語版のチャングムの腹黒さは、日本語翻訳上の工夫により、大幅にマイルドになっています)

本物の韓尚宮を知っていた人たちは、ドラマのストーリーとはあまり関係の無いところで、ムチャクチャ面白がったというのもうなずけます。

 

本物の韓尚宮、韓熙順氏の経歴

本物の韓尚宮、韓熙順氏は、1902年(高宗39年)、13歳で徳寿宮の厨房宮女になりました。
以降、宮廷の厨房尚宮として高宗の時代に再建された景福宮や昌徳宮を経て、王様である「高宗」と「純宗」の料理を担当しました。

1910年、朝鮮が日本の植民地になってからは、朝鮮王付きの女官として大日本帝国宮内省勤務(国家公務員)となり、太平洋戦争終結まで、昌徳宮の楽善斎の厨房を取り仕切ることとなりました。

1942年、淑明女子専門学校より派遣された黄慧性氏の面倒をみることになったことから、史上最も有名な厨房尚宮として、人生が大転換することになっていきました。

1945年、日本の敗戦に伴い、日本国宮内庁を退職。無職となるも、全州李氏の援助の下、昌徳宮の楽善斎を取り仕切り、残存する朝鮮王家の世話をすると同時に、黄慧性氏とともに宮廷料理研究を継続。

1971年、重要無形文化財第38号、朝鮮王朝宮廷料理、1代目技能保持者(人間国宝)認定。