大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

韓国の鉄道は『列車』と『電鉄』の2階建

日本の鉄道は「新幹線」と「在来線」の二階建て。韓国の鉄道は「電鉄」と「列車」の二階建て

新しい都市近郊電車の「電鉄」(ジョンチョル)と、昔からの都市間輸送の「列車」(ヨルチャ)

日本の朝鮮鉄道を引き継いだKorailは、昔は、日本の在来線同様、特急から各駅停車まで様々な種別の列車を運転していました。
しかし、現在はやめてしまっています。

都市近郊電車『電鉄(ジョンチョル)』と、KTXを含む都市間輸送列車『列車(ヨルチャ)』の2種類になっています。

なお、近郊電車『電鉄(ジョンチョル)』は地下鉄に直通する関係上、『地下鉄(チハッチョル)』と言う人が多いです。

ところで、『電鉄(ジョンチョル)』と『列車(ヨルチャ)』。
切符の買い方も、乗車方法もまったく違うので、別な鉄道と考えるのがよいです。

ちなみに、ここでの韓国語の表記ですが、ハングル通りには表記していません。
日本人がハングル通りに発音しようとすると、パッチムの発音が韓国語ではありえない発音になってしまうので、現地ではまず通じなくなります。
日本人が発音することが可能な発音で、現地の韓国人に通じる発音にアレンジして表記しています。

 

基本的に韓国人は、鉄道に無頓着

韓国の鉄道についての説明は多くのサイトで行われていますが、やっぱり鉄道大国、日本人の視点によるところが大きいです。
韓国人は基本的に、鉄道にはえてして無頓着です

なんせ、鉄道駅は、アメリカの鉄道駅と同じで、待合設備が貧弱、駅周辺には食堂もホテルもなく、バス停がないのはもちろん、タクシーすら客待ちしていないケースが目立つので、出かける用事があったら、自然と脚は、これら鉄道駅にないものが揃っているバスターミナルに向かいます。

それじゃいかんということで、Korailは、せっせと鉄道の改革を進めているというわけです。

 

電鉄(ジョンチョル)。一般的には地下鉄(チハッチョル)と言うことが多い

1974年、日本の技術援助で誕生したソウル地下鉄1号線が発端となった新しいタイプの鉄道。

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早い話が地上を走る通勤電車なのですが、ソウル地下鉄1号線が発端となった新しいタイプの鉄道なので、地下鉄という人が圧倒的に多いです。

標準軌(1,435mm)で、交流25kV60Hz(地下鉄区間は直流1500V)。
電車は基本的に交直両用車。
時速180km運転が可能な高速車で、プラットホームの高さ以外、KTXと同じ仕様のため、KTX高速線も走れます。
実際、京釜電鉄線光明シャトルは、KTX高速線を定期運行しています。

ちなみに、『通勤電車』とは言いません。

というのも、都市間輸送列車の種別で、『通勤(トングン)』という、遅い、本数が少ない、よく遅れるの3拍子揃った超不人気列車(絶滅寸前)があるため(ややこしい)。
『通勤(トングン)』の評判は最悪ですが、地下鉄は人気があります。

高床式ホームに発着し、基本的にバリアフリー
韓国の鉄道がほとんど非電化であった時代より電鉄線は全線電化しており、ホームドアの整備も進んでいます。

ちなみに、電鉄区間は送電能力に余裕のある交流2万5千ボルト送電。
地下鉄区間はトンネル断面を小さくするため直流1500ボルト送電。

1970年代の日本の技術支援で導入した日本の技術がもとです。

当時、技術移転が行われた当時の日本の鉄道は、全般的に変電所の容量不足に苦しんでおり、電車を走らせたら変電所のブレーカーが上がって運行停止という事故が頻発していました(当時の日本の技術ってそんなレベル)。

ブレーカーが落ちた場合、下手にブレーカーを上げると、全列車が一度に起動してしまい、膨大な起動電流が流れて変電所が焼けてしまうので、必ず全列車のノッチOFFを確認した後、ブレーカーを復旧し、1本ずつ順番に再始動させる必要が生じるという厄介な話になります。

もし、エアセクションで停止してしまった列車があったら、ディーゼル機関車で引っ張り出してからノッチをONしないと架線が焼き切れるので、そもそもブレーカーを復旧できません。

電車を走らせたら変電所のブレーカーが上がったなどという無様な真似を、軍事独裁バリバリだった時代の韓国でやれば、マジで打ち首獄門の世界だったので、生きて日本に帰るには、ブレーカーが上がったなどという無様な真似をするわけには絶対にいかぬと、当時の日本人技術者が送電能力に余裕を持たせた結果がこれ。

新幹線用の大容量の変電所を韓国に持ち込んだ関係で、東海道新幹線と同じ、交流25kV60Hzで送電することになりました。
余裕持たせすぎだろ。

それでも電車の発着本数を増やせば、変電所のブレーカーが上がる可能性があるということで、もともと省電力設計の103系を車上切り替え付きの交直両用車に改造したものを韓国に持ち込んだという念のいれよう。

日本では新幹線試験用に時速200km運転可能な101系改造通勤電車があったのですが、せっかく送電能力に余裕を持たせたのだからと、この設計を韓国へ持っていく103系改造電車にぶち込んだ結果、韓国の電鉄用電車は、切妻箱型車体ながら、列車線を走る特急列車より速い時速180km運転が可能という変態的な性能を持つに至りました。

この変態高速仕様は、韓国の電鉄線の標準的装備となり、現在に至ります。
ソウル地下鉄1号線が、ソウルからKTXで2駅以上離れた忠清南道牙山市新昌まで運行されているのも、KTXと遜色ない所要時間で走りきるこの変態高速仕様あってのことです。

後に韓国はヨーロッパ製のGEC電車も多数輸入しましたが、GEC電車は、変態高速仕様を盛り込んでいない、ごく常識的な通勤電車であったため、高速運転が必要だった京釜電鉄線や京仁電鉄線では使えませんでした。
また、メーカーが一方的に廃盤にして、部品供給を断って新車購入を迫るという、ヨーロッパ式商法にも辟易した関係で、103系変態改造車は生き残りました。
三菱電機がしぶとく、103系改造用電装品をリリースし続けたことも大いに影響しています。
もうとっくに廃車になっていると思ったら、意外なことに、交通博物館の展示車になったもの以外は、現在も内外装を改造されつつ、未だに使用されています。

 

都市間輸送の「列車」(ヨルチャ)

昔ながらの鉄道。電鉄線が優れているのはわかるが、地方の閑散線まで電鉄化改良ができないので、昔の設備のまま(電化だけはするが)、列車だけ近代化することになった

 

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 都市間輸送列車(KTX山川)

KTXー1導入時に続発したトラブルの反省の上に設計されているので、高性能。正面は大型1枚窓となっているのが特徴。整備にかかるコスト削減を目的として、機関車方式(動力集中方式)にしていたが、出力不足が原因の加速力不足による列車遅延が頻発したため、20両編成の場合、機関車を2両から4両に増やしている。おかげで、電車方式(動力分散方式)と整備コストが大差なくなっている。機関車の4両は乗客を乗せることができないうえに、ソウル-釜山間の運転時間は、時速165kmが最高時速のITXセマウルより30分早い程度。出力全開で、時速300kmを出して運転できる時間が短いためである。

 

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都市間輸送列車(ITXセマウル)

客車列車置き換えを目的に日本から導入された日立製作所製電車(ヌリロ号)が原型。ヌリロ号の車体がよくある鋼製であったため、例によって、日本から輸入する場合、同等のものが世界中にないことを証明しなければならない規制に引っかかったうえ、冷房装置と保安装置を担当したSLS重工業が倒産したため、ヌリロ号の輸入継続ができなくなった。そこで、走行部品や電装品は日本から輸入し、車体は東海道新幹線700系同等のアルミダブルスキン構造で現代ロテムが製造することとなった。正面はKTX山川同様、大型1枚窓となっているのが特徴。
ITXセマウルは、在来線しか走行しないが、電車方式(動力分散方式)になっているため、加速性能が高く、安定した時速165km運転が可能。そのため、ソウル-釜山間の運転時間は、時速300kmが最高時速ながら、列車が詰まり気味のKTXより30分遅い程度。電鉄線電車よりスピードは遅いが、従来からの鉄道施設を改修しなくても運行可能な点が評価されている。
乗り心地も、設備面も、特急列車といった感じ。
これなら、KTXでなくても、ITXセマウルでよくね?といった意見が鉄道関係者の間ででている。現代ロテムが開発した動力分散方式のKTXイウムは、塗装こそ青色だが、見た目はITXセマウルそのまんま。

 

都市間輸送列車(ムグンファ)

KTX開通前から存在する列車種別。昔は、韓国国内の鉄道が大部分が非電化だったため、大馬力の貨物用ディーゼル機関車で牽引していた。貨物用機関車ゆえ鈍足であったため、俊足のKTX乗り入れ列車や、ITXセマウルと同じ線路を走ると、円滑な列車運行に支障してしまうため、現在は、電気機関車牽引に変更されている。
もともとムグンファ号は特急列車であったが、今となっては鈍足なため、緩行列車の位置づけとなっている。車内設備は、特急列車だった時代のまま現在も使われている。客車は、古いものから廃車が進んでおり、機関車牽引の客車列車のムグンファは、いずれ、なくなる見込み。ソウル-釜山間441.7kmを走破する列車は何本かあるが、日本では絶滅した長距離鈍行列車(各停ではない)で、機関車牽引の旧型客車列車とあって、日本の乗り鉄には人気がある

 

『列車(ヨルチャ)』は、基本的に、通過駅のある急行列車しか存在しません。
最近まで、ローカルな駅に各駅停車していく鈍行がありましたが、単純に廃止されました。
ローカルな旅客輸送は、市外バスに任せるということのようです。
というわけで、急行列車の停車しない駅は旅客営業が廃止されました。ただ、信号所としては現役なので、建物は残っています。

 

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旅客廃止されたローカルな駅
旅客廃止されたとはいっても、信号場として機能しているので、建物もプラットホームも大抵残っている。