大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

京釜線

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路線距離:441.7km
軌間:1435mm(標準軌
駅数:90(ソウル駅 - 天安駅:36、天安駅 - 東大邱駅:36、東大邱駅 - 釜山駅:18)
最高速度:150km/h
保安装置:ATS
全線複線以上
三複線区間(6本):ソウル駅 - 九老駅 (11.7km)
複々線区間(4本):九老駅 - 斗井駅 (81.9km)
複線区間(2本):斗井駅 - 釜山駅 (348.1km)
電化区間:全線(交流25kv, 60Hz)

 

京釜線は、大日本帝国がロシアのシベリア鉄道建設に対抗して建設した路線

その目的は、日本とベルリンを10日間で結ぶ欧亜連絡鉄道建設という壮大なものだった

京釜線は、1908年にロシアのシベリア鉄道建設に対抗して、日本が欧亜連絡鉄道として開設した京釜本線の成れの果て。
釜山駅から中国の奉天駅(現:瀋陽駅)を結ぶべく敷設された経緯がありました。

起点は、開業当初は龍山駅だったが、朝鮮の植民地化の頃に京城(けいじょう)駅に変更された。起点がソウル駅となったのは1947年から。GHQの統治下にあり、過渡期だったことから、ソウル駅の住所も、大日本帝国朝鮮ソウル市という、いびつなものだった。この時代の韓国の書類を読むと、こういう誤記とはいえないまでも、おかしな記述は多い。1948年、大韓民国建国により、晴れて大韓民国ソウル市の首都駅となった。

建設にあたって、日本で頻発した鉄道建設反対運動の経験が大いに反映された

日本の鉄道建設時に頻発した反対運動を考慮し、日本が建設した街の釜山以外は、既存の市街地を避けるように敷設されました。

現在では沿線に大田(テジョン)、大邱(テグ)といった韓国有数の大都市を経由していますが、開通当初、大田(おおた)は、文字通り田んぼの真ん中にある駅であり、大邱(だいてい)も大邱(テグ)の街外れの何もないところにありました。

終点は釜山駅。現在の釜田駅に釜山駅を移転する構想が20年以上経った今でもまだくすぶっているので、ソウル駅と異なり、気合を入れた作りにはなっていない。なかなか現在の釜山駅を廃止できない理由は、駅裏の国際旅客船ターミナルの存在のためで、福岡方面の旅客が半端でなく多いためである。

初代釜山駅。1953年の釜山大火で焼失。初代釜山駅の駅舎のあった場所は、現在も釜山駅であることには変わりないが、列車の長編成化に伴う留置線用地となっている。

釜山桟橋駅。欧亜連絡鉄道の起点駅として建設していたにも関わらず、初代釜山駅舎が釜山港第一埠頭から歩いて3分もかかるのはおかしい、釜山駅は関釜連絡線から徒歩0分でなければ、国家予算の不適切な支出であると会計検査院から指摘があり、急遽建設された駅。営業上では釜山駅と同一駅であった。会計検査対策上、戦前の京釜本線の終点は釜山桟橋駅とされたが、あまりにもあほらしい話であったので、1945年、終戦で、朝鮮半島での会計検査がなくなったと同時に廃止された。

 

現在、『京釜本線』でないのは、現在、京釜線に支線が存在しないから

日本の路線で例えるなら東海道本線に相当します。
敷設当初、数多くの貨物支線が存在したので「京釜『本線』」という名前になっていましたが、大韓民国成立後、支線にはどんどん別の名前を付けてしまっているので、「京釜『本線』」とは言わず、京釜線という言い方になっています。
本線の他、伽耶線、龍山線のような数多くの支線、高速別線(京釜高速線)を有するため、日本式の路線命名法によれば、今も『京釜本線』ということで間違いはないでしょう。

大田駅。京釜線の中間に位置する大駅。昔は湖南線との分岐駅として、重要な拠点駅であったが、現在は、旅客扱い機能のみを残し、他の機能は大田操車場駅に移転した。

大田操車場駅。京釜線、湖南線、京釜高速線の全列車が必ず通過しなければならない韓国で最も重要な分岐器がこの駅に存在する。この分岐器のおかげで、韓国の場合、KTX列車が高速線と並行在来線を柔軟に行き来することが可能となっている。旅客扱いはなく、一般人が立ち入り禁止であるのはもちろんである。

 

長らく軍事上の理由から、非電化路線だったが2000年頃、交流電化された

長らく軍事上の理由から、非電化路線でしたが、KTX開通をきっかけに全線電化されました。
日本統治時代の京釜本線は、運転本数も少なく、牽引する列車も車両数が少なかったため、簡易規格でしたが、韓国独立後、重量級のアメリカ製電気式ディーゼル機関車に対応するため、路盤も頑丈に補強されています。

 

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今も主力の7000型電気式ディーゼル機関車アメリカ製。パワフルなディーゼル機関車であるが、エアコンがなく、動輪から伝わる振動があまりにもひどいため、乗務員の評判は悪い。もともと貨物用に設計された機関車ゆえ、低速大出力型で、時速150km/h対応の京釜線を、主にムグンファ号を牽引して爆走するも、出力最大でも時速150km/hには達せず、在来線を迂回運転中のKTXや、電車特急のITXセマウル号の運行に支障するという悩みがある。

 

京釜高速線ができた現在でも、重要性は変わらず

京釜高速線は、建設経費をケチった関係で、線路容量が小さいため、京釜線は、溢れたKTXの迂回路としてもよく利用されます。欧亜連絡、および満州国と日本本土を結ぶ生命線としての使用を念頭に建設された路線のため、線形も良く、最高速度150km/hに設定されています。

 

京釜線は元々高規格で、その設計最高速度を維持できる列車は、実は少ない

ただし、機関車けん引の列車が主体なので、どの列車も出力不足問題が大なり小なり存在し、最高速度を維持できるのは迂回運転中のKTXや、動力分散型のITXセマウル号ぐらいのもので、フルパワーで走っても、最高速度まで達しない列車が数多くあります。

 

京釜電鉄線が、京釜線に並行して建設されており、かつては、市外バスで行くのが普通であった牙山までを結んでいる。ソウルから天安までの京釜線沿線には、大企業の工場が数多く立地し、沿線の旅客需要はもともと大きかった。京釜電鉄線は、KTX開業にあわせて、KTXの天安牙山駅(KTX天安牙山駅と長項線牙山駅は、まったく同じ場所にあるのだが、別の駅である。横浜線菊名駅東急東横線菊名駅の関係に似ている)まで延伸し、ついでに牙山市の外れの新昌駅まで延伸された。こちらは、KTXの天安牙山駅周辺を中心に、ソウルのベッドタウン開発が盛んであり、新昌駅付近まで開発構想が存在したためである。

ソウルから忠清南道の天安までは、ソウル地下鉄1号線が長距離直通運転している

輸送量は旅客・貨物とも韓国第一位であり、高速別線(KTX)ができた現在でも、線路は飽和状態にあり、その過密輸送を改善するために、ソウルから忠清南道の天安までの区間は電車線が増設されていて、ソウル地下鉄1号線が直通運転しています。

天安は、京釜線沿線ながら、昔は、ソウル南部ターミナルから、市外バスで行かなければいけないような地方都市で、不便な場所でした。
毎日牛乳など、大企業の大工場が散在する場所で、ソウルとの交通の便の悪さは、昔から問題となっており、KORAILがそれに応えたというかたち。

当初、列車線を利用した通勤列車(トングンヨルチャ:現在絶滅寸前の列車種別)を設定したのですが、列車線名物、速度が遅い、よく遅延する、よく運休するなど、なにかと苦情が多く、地下鉄延長が要望され、ソウル地下鉄1号線が走ることになったようです。

天安に特に何があるというわけではないですが、日本の旅行案内にはまったくといっていいほど紹介のない都市で、日本人の乗り鉄が、あえて、天安に何があるのか確認しに、わざわざ天安までソウル地下鉄1号線の電車でやってくることはあります。
さすがに、観光地でも何でもない、地元民しかいないような地方都市なので、日本語も英語もまったく通じません。