大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

ソウル地下鉄2号線

 


f:id:sirius-B:20191122091058j:plain

タネ車は日本の103系1000番台で、初期は抵抗制御車。抵抗器使用時間制限により、中間段を常用できない不便さが嫌われ、すぐに、制御部品として、201系のチョッパー機器を登載したものに変更。あまりに不細工な外観が不評で、GECの車両を導入したが、慢性的に大混雑する2号線で使うには車体が小さすぎ、詰め込みがきかなかった。そこで、103系型の外装の不細工な車両が長く使われることになった。電鉄とは相互乗り入れしないので、直流専用車。最近は、ステンレス製の電車に更新がすすんでいるが、旧車の内外装を改造した改造車も多数生き残っている。ちなみに、GEC車両に限っては、メーカーのGECが交換部品をあっさり廃盤にし、アフターサービスを打ち切ったため、修理に支障をきたしたことから、機器流用はされていない。

GEC車両

新型車。慢性的な大混雑を意識して、詰め込みが効くよう広幅車としたが、正面が不細工にならないよう工夫されている。2号線の車両は、地下鉄なのに、正面非貫通車が多い。これは単純に純韓国産地下鉄第1号だったためで、他線の地下鉄火災事故を受けて、車両の貫通化改造を進めている。

 

ソウルの山手線を目指した意欲的な環状路線。スラム街と、ソウル周辺の農村の再開発が目的で建設された

1周1時間。それにしても、いつ乗っても超満員なのが玉に瑕

韓国が独自に建設した地下鉄としては最初の地下鉄である2号線は、非常に意欲的な設計になっています。

増発がいくらでもできる環状線というのもその一つです。

また、ソウルで一番賑わっていた繁華街に通した1号線と比較すると、2号線は、開通当時、これから再開発しようとするエリアに建設されました。

イメージとしては、東京の山手線そのままで、実際、2号線(乙支路循環線)の大きさは山手線とだいたい同じです。

ソウルの地形を無視して、東京の山手線の大きさ、つまり1周1時間の大きさにこだわったのではないかと思われる名残がいくつかあります。

ソウル高速バスターミナル、狎鴎亭、盤浦など、ソウル江南地区の代表的繁華街からは2号線は、やや南の丘陵地帯にずれて走っています。

もともと2号線沿いにソウル江南の繁華街を作る予定だったようです。
江南や、瑞草がその名残りです。

しかし、そうはならなかったのであります。

観光用の路線図では、工業地帯である九老、永登浦あたりは省略されることがありますが、ちゃんと循環線になっています。

 

f:id:sirius-B:20191122091010j:plain20年前の路線図だと2号線の循環線としての形がわかりやすい。緑の路線が2号線

 

ソウル市庁は地下鉄2号線沿線。地下鉄1号線の大きくて立派な駅の横にある。地下鉄1号線の駅は、どの駅も大きくて立派だが、地下鉄2号線の駅は標準サイズなので、こじんまりとした感じである。手前の旧庁舎は、元京城府庁舎。奥のガラス張りの建物が新庁舎。ソウル市庁自体は、一般市民相手の事務はほとんどしておらず、市役所に行く用事のある時は、通常、町内の洞事務所へ行く。にもかかわらず、市庁駅の旅客がものすごく多いのは、1号線と2号線の乗り換え客がとても多いためである。景福宮、徳寿宮へは歩いてすぐ。

 

2号線にある支線は、車両基地への引き込み線を利用した旅客営業線

現在、聖水支線、カチ山支線がありますが、これは車両基地への引き込み線を利用しての営業で、すべて短編成による線内折り返し運転であり、乙支路循環線との直通運転はありません。

 

東大門市場。東大門市場は2号線の沿線にある。ただし、東大門の下にある大きくて立派な地下鉄駅は地下鉄1号線の駅で、地下鉄2号線の駅は、地下鉄4号線、地下鉄5号線の駅とともに、DDP東大門デザインプラザ(旧:東大門野球場)の外れの方にある。東大門市場は、夕方5時からはじまり、朝5時に終わる夜の市場である。料金の安い夕方遅い飛行機で到着しても、余裕で遊びに行ける観光地として、根強い人気がある。ただし、深夜に東大門市場に集まるタクシーは高確率で雲助タクシーという噂があり(善良なタクシーは雲助タクシーに嫌がらせされるので東大門市場に近寄れない)、注意が必要。

 

漢江を渡る部分については、一旦地上に出て、橋で渡る

最大の難所、漢江を渡る部分については、一旦地上に出て、橋で渡る堅実な方式で施工したため、問題は少なく、ほぼ予定の工期で完成しています。
のちに、堂山鉄橋がオカラ工事が原因で落橋の危険があることがわかり、作り直されるということがありましたが、マスコミが食いついてお祭り騒ぎになった以上のことは特にありませんでした。

 

東ソウル総合バスターミナルは地下鉄2号線の沿線にある。ソウル最大の発着数の長距離バスターミナル。それにしては狭すぎるのではないかい?という疑問はその通りで、通路や周辺道路にはバスが折り重なっている。もともと第二バスターミナル的位置付けだったが、渋滞の影響を受けにくいという地理的特性から、なし崩し的に発着本数が増加し、現在に至る。白いビルの背後の駅舎が地下鉄2号線江辺駅。すぐ横が漢江なので、渡橋のために高架線になっている。

沿線の江北地区の乙支路は、戦前までは日本人街だった街。朝鮮王朝時代は中下層民の居住区で、戦後は1980年代まで、ソウル市きってのスラム街として悪名を馳せていた

江北のスラム街だった乙支路(今もスラム街との噂は尽きない)、もともと、戦前の日本人街。
戦後、住人のいなくなった空家に低所得者が住み着いてスラムを形成しました。朝鮮王朝の頃も、もともと中下層民の居住区で、乙支路といえば、出身家系の良い人は避ける土地でした。
同様に、江北の貧民街だった麻甫区(今も若干ガラが悪い下町)、漢江の対岸の農村地帯をぐるっと一周する循環線としてソウル地下鉄2号線は建設されました。

 

蚕室も、地下鉄2号線の沿線にある。もともと地下鉄の通っていなかった松坡区、江東区民は、市内バスに乗って蚕室までやってきて、地下鉄2号線に乗り換えていた。人口が急増し、バスの運行ができないほど蚕室の渋滞が激化したことから、更なる地下鉄整備が進んだ。このバスから地下鉄へ乗り換える富裕層である松坡区、江東区民相手にショッピングセンターを建設したのがロッテであった。現在、蚕室はロッテ系列の百貨店、スーパー、ホテル、遊園地、コンサートホール等々が集積したロッテワールドとなっている。ここには韓国一の高層ビル、ロッテワールドタワー(123階建て)がある。写真の石村湖水は、漢江の旧河道を利用して、ロッテワールド遊園地を造成するために作った人造湖だが、ここから、李承晩大統領が人知れず廃棄したはずの三田渡の恥辱の碑(大清皇帝功徳碑)が出てきて、韓国中が驚いたというハプニングがあった。

 

沿線の江南地区は1980年代までは、港湾や漁村として発展していた。その名残で巨大な市場もある

漢江は水深が深く、外航船が進入できることから、江南は、もともと、港湾や漁村として発展していました。
超高級住宅街のド真ん中の蚕院が、(韓国の)高級料亭の朝食には欠かせないカンジャンケジャン(生きたカニの薬味醤油漬)の名産地であったりするのは、つい40年前まで漁村として賑わっていた名残りです。
2号線の沿線のやや離れた場所に、可楽農産物市場、鷺梁津水産物市場(どっちも農産物と水産物を扱うが、取扱の主流が可楽市場は農産物、鷺梁津市場は水産物)があるというのも、もともと、江南が港湾や漁村として発展しており、ソウルへ向けた物資の集散地だったことと関係があります。

 

ソウルオリンピックメインスタジアムも、地下鉄2号線の沿線にある。総合運動場駅が最寄りである。

 

三成、COEX Mallは、地下鉄2号線沿線にあるが、日本人旅行者には知名度が低い。韓国人との会話では頻出する。ソウルの一大ビジネスセンターである。外国人観光客が泊まるのに不便ないレベルのホテルも多い。ここに旧ソウルシティーエアターミナルがあり、コロナ前までは、韓国系の航空会社の場合、事前チェックイン、預託荷物の預かり、出国審査が可能であった。その名残りで、ここから、仁川国際空港までノンストップバスが出ている。蚕室のロッテワールドホテルなどのあるソウル東部から仁川国際空港まで行く場合、最速がこのルートである。

 

江南の2号線沿線は、現在も残存する朝鮮王家の資金源でもあったりする

江南は平坦な江北と違って、地形が起伏に富んでおり、丘陵には、歴代朝鮮王の親族の陵墓があったりします。

現在は、朝鮮王の親族の陵墓の周辺は大規模な高級住宅団地が次々に建設され、宅地化されていますが、ここの借地料、アパート経営、ビル経営の莫大な収益が、旧朝鮮王朝のなれの果て、財団法人全州李氏大同宗約院の運営資金になっていたりします。

財政的な側面だけを考えれば、現大韓民国政府になりかわり、朝鮮王朝を再興することも夢ではないのですが、現在の全州李氏当主は全くその気はありません。
タダでさえ難しい韓国の統治のような、厄介事には絶対に手を出したくないということのようです。

 

江南も地下鉄2号線沿線であるが、知名度の割には、ぱっとしない。むしろ、何もないところに街を作った松坡区、三成洞が江南のイメージどおりである。実は、ソウル市民は、江南を松坡区、三成洞を江南とイメージしている節がある。これは江南区、瑞草区にはソウル市併合前の旧集落があちこちに残っていて、江南のイメージにそぐわない場末感を醸しているからである。それに、江南駅自体が江南の繁華街からずれたところにあるためである。江南の中心部に行くなら、地下鉄7号線の方が便利である。

 

弘大入口は、日本の原宿、表参道の雰囲気。地下鉄2号線沿線である。ソウルの地下鉄路線網は、江北西部を苦手としているが、地下鉄2号線は江北西部に強い。市庁駅から弘大入口駅までの混雑はものすごい。

 

古くからのホテル街で知られる新村も地下鉄2号線沿線である。弘大入口から歩ける距離にあり、新村自体も不夜城の歓楽街であるため、韓国旅行の上級者が定宿としているホテルも多い。新村も弘大入口も、外国人観光客を想定した繁華街ではないので、ある程度の韓国語はどうしても必要になるので、ビギナーにはきついかもしれない。