大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

ソウル地下鉄名物、旋回バー式の自動改札機の珍な歴史

ソウル地下鉄には、旋回バー式の自動改札機の自動改札機がある

ソウルの地下鉄は、もともと、日本の東京と同じく2社体制だった

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旋回バー式の自動改札。腹で押して通過するのであるが、ちょくちょく作動不良で回らない時がある。回るつもりで体重をかけているので、そんなときは、不意のボディーブローになる。改札機の横でしゃがんでいる人がいたら、改札機ボディーブローをバッチリ喰らった人である可能性が高い。駅員は、喧嘩になるのが怖いんで、見てみぬフリをするのだけれど。

 

ソウルの地下鉄は、もともと、帝都高速度交通営団都営地下鉄の2社を擁する日本の東京と同じく2社体制となっていて、1〜4号線と9号線を運営するソウル特別市地下鉄公社、5〜8号線を運営するソウル特別市都市鉄道公社がありました。

何で2社体制だったのかというと、1〜4号線と9号線がソウル市内で完結していたのに対し、5〜8号線は、ソウル市外に路線を伸ばしていたためです。

準拠法が、ソウル特別市地下鉄公社が、ソウル特別市地下鉄公社設置条例。
ソウル特別市都市鉄道公社がソウル特別市都市鉄道公社設置条例となっていました。

こういう部分がすごく日本的であるのは、この制度を作った人が元満州国陸軍少尉白善燁(ペク・ソンヨプ)であり、手慣れた大日本帝国の法制度に準拠したためであります。
白善燁は、本来、生粋の軍人で、韓国軍創設で大きな活躍をした人ですが、わりと世渡りが器用な人で、ソウル市の交通制度の建設でも大きな活躍をしています。

日本国にも関係が深く、意外なところでは、1995年、日本国勲一等瑞宝章を受章しています。
が、このことで、韓国の反日団体から非国民・売国奴扱いされるという散々なめにも遭っています。
軍事政権時代の権力者であった経緯から、韓国のおかしなところを歯に衣着せぬ物言いで批判する直言居士であったせいも多分にあります。

 

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白善燁。朝鮮戦争の時の写真。柴犬に似た顔付きが特徴の人。「米韓同盟の象徴」、「ホワイティー」等、米軍からの信頼は篤かった

 

白善燁と旋回バー式の自動改札機

白善燁は、韓国軍時代の部下の朴正煕が大統領に就任すると、朝鮮戦争時の活躍から、米軍の信任が神懸かり的に篤かったことが買われ、外交官として、アメリカと関係の深い中華民国・フランス・中近東各国・カナダ大使を歴任。

帰国後は、前例踏襲の悪弊を打破し、破綻に瀕していたソウルの都市交通に大鉈を振るうことが期待され、交通部長官に就任しました。

1970年、よど号ハイジャック事件では、やはり米軍の信任が神懸かり的に篤かったことが買われ、事件解決に奔走することになります。
このとき、日本赤軍を欺くために、大胆にも一時的に韓国の首都の名前をソウルから平壌に変更。
金浦国際空港を一夜にして平壌国際空港に改装し、米軍と日本政府と示し合わせて、よど号を偽平壌国際空港に航空無線や北朝鮮軍に偽装した空軍機で誘導するという大胆な作戦を決行しています。

破天荒な作戦を好んだ朴正煕大統領の性格を元上官として熟知していたがゆえの大胆な作戦でした。

これが功を奏し、よど号を韓国に着陸させ、離陸不能にすることに成功しています。
現在ならとても不可能な大胆な作戦には、犯人の日本赤軍も「ここまでやるか」と度肝を抜かれたといいます。

この結果、日本から全面協力の謝礼として地下鉄建設のODAと技術協力を獲得します。

そして、4年の歳月を経て、1974年に直流1500V・架空電車線方式で1号線開通にこぎつけます。

前例踏襲の悪弊を嫌う白善燁らしい点として、トンネル断面に制限のある1号線内は直流1500V、直通先の鉄道庁(現・韓国鉄道公社)広域電鉄は送電容量に余裕のある交流25kV60Hzを採用し、電車は日本の地下鉄では当時採用がなかった20m級車上切り替え式交直両用車を日本製で揃えたことにありました。

また、日本で採用がなかった自動改札機を揃えたのも、白善燁らしい点で、当時、自動改札を導入していたニューヨーク地下鉄と同じ、旋回バー式の自動改札機が設置されました。
ゲート式の自動改札機が、まだ存在しなかったのがその理由です。

旋回バー式の自動改札機は、先行して開業したソウル特別市地下鉄公社1〜4号線に導入されました。

後に整備されることになった9号線と、ソウル特別市都市鉄道公社の路線では、いろいろ問題の多かった旋回バー式の自動改札機は導入されず、日本と同じゲート式の自動改札機が導入されることになりました。

 

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旧式なだけあって、キャリーカートを通すのに一苦労

 

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改札機ボディーブローを喰らったときは、改札機のバーを潜る必要があるのだけれど、改札機ボディーブローを偽装した強行突破(無賃乗車)も横行している

 

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身障者用ゲート。ここのセンサーに交通カードをタッチして通過できるが、建前上、障害者用兼誤乗退出用ゲートなので、通常時の一般人の使用は制限されている。間違った方面行きの改札に入ってしまった場合、入場後5分以内ならここから出られる。それを超えた場合は、係員のいるブースで交通カードの入場記録を無効にしてもらう。身障者ゲートは旋回バー式自動改札以上に評判が悪く、早々と通常のゲート式の自動改札に更新されている。

 

ソウルの地下鉄は一本化されたが、旋回バー式の自動改札機は残る

地下鉄1〜4号線と9号線が大変便利な路線であるため、ソウル市外への延伸開業の要望が大きくなっていきましたが、ソウル市外に路線を持つことのできないソウル特別市地下鉄公社は、韓国鉄道公社の首都圏電鉄に乗り入れて対処していきましたが、乗務員の運用上の制約が大きすぎ、ソウル特別市地下鉄公社もソウル市外に路線を持つことができるようにする必要性に迫られました。

それでも組織改変に伴う手間を嫌って前例踏襲にこだわって2社体制を継続するのが日本人だとすれば、韓国人はこういう時、1社にまとめようとします。

これは国民性の違いといっても過言ではありません。

それで、ソウルの地下鉄は、ソウル交通公社に1本化されました。
しかし、1〜4号線の旋回バー式の自動改札機は、いろいろ問題を抱えながらも、設置面積が小さくて済むというメリットからゲート式に更新されずに残っています。

 

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自動改札は、やはりゲート式が通りやすい