大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

金海国際空港

左側の新しい建物が国際線ターミナルビル、中央の古い建物が国内線ターミナルビル。以前はソウル(金浦)行きの便が15分間隔で発着していたが、KTX開業後、高速鉄道に国内線旅客を奪われた。現在は、国際線の発着が増加傾向で、国際線旅客ターミナルのリニューアル工事が進められている。利用客は増加の一途を辿っており、駐車場の高層化が急ピッチで進められている。すぐ上方の川は洛東江洛東江の川向こうは、釜山市中心街。

韓国第三の国際空港、金海国際空港(第一は仁川、第二は金浦、ともにソウル)

釜山にも国際空港がある

韓国第二の都市、釜山にも国際空港があるということを知っている人は、かなりの韓国通でしょう。
知名度が低い理由として、釜山の空港の名前が『金海国際空港(キムヘ クッチェコンハン)』であるということはかなり大きいでしょう。

ちなみに、金海国際空港が開港した頃、ソウルにある空港が『金浦国際空港(キムポ クッチェコンハン)』と、漢字で書いても、日本語で読んでも、韓国語で読んでも1文字しか違いがない非常にまぎらわしい名前の空港でした。
そのため、韓国国内でも、正式名が使われることがボイコットされるケースが目立ち、航空時刻表でも「ソウル→釜山」と書かれているほど。

 

金海国際空港は、釜山港と釜山新港の間にある。上空から見ると、巨大な釜山港湾関連施設の中にある感じ。釜山駅方面とは南海高速道路で結ばれており、交通至便である。もっとも、一般道経由でも30分はかからない。軽電鉄と地下鉄の乗り継ぎの場合、山を迂回する必要があるため、遠回りになり、1時間程度みなければならない。釜山市民の場合、タクシーで釜山駅方面へ行くケースが多く、空港タクシー乗り場は、一発10万収狙いのタクシーが客待ちをしている。もっとも、空港定額料金だと、昌原、密陽まで10万ウォンいかないので、本当のタクシー常連客は、空港で客待ちしているタクシーはまず使わない。事前の予約が面倒で、空港で客待ちしているタクシーを使ってしまうような空港客は、マナー最悪、暴言・暴行当たり前のきつい迷惑客が結構多いから、ここにつけるタクシーも、一癖二癖あるベテラン運転手か、空港客の恐ろしさを知らない新人運転手に二極化する傾向がある。それが嫌な人は、軽電鉄で、沙上のバスターミナルのタクシー乗り場に行って、普通のタクシーを狙って拾うかんじになる。

 

釜山飛行場というのが既にあったため、金海国際空港という名前になった

ちなみに、この空港は、釜山市にあるのに、なぜ『金海』という名前がついたのかというと、釜山飛行場というのが、既に海雲台の西の外れにあって、釜山空港という名前にできなかったためです。

実は「金浦国際空港」が「ソウル国際空港」を名乗れなかったのも同じ理由で、ソウル市の東南にソウル飛行場が既にあるためです。
ちなみに、ソウル飛行場は、現在も軍用飛行場として使用されています。

釜山飛行場は、釜山中心市街地からかなり距離がある海雲台にあったことから、釜山中心市街地に隣接する金海国際空港が開港してしまうと、その存在意義を失ってしまい、金海国際空港が1976年に開港してから間もなく閉鎖されてしまいました。
今は、釜山展示コンベンションセンターなど釜山市関連施設になっています。

 

今はなき釜山飛行場のよもやま話

ところで、釜山飛行場が不便な海雲台の西の外れに建設された最大の理由は、釜山という街が、山と海に囲まれた軍事的要衝の地に建設されたという経緯と関係があります。
釜山という街が、平地が極めて少ない山に囲まれた場所であるため、地盤の堅固で平坦な場所は、海雲台の西の外れしかなかったからです。
釜山は、日本が大陸侵攻の拠点として、天然の要害の地に建設された街で、実際にこれが効を奏したのは、1950年の朝鮮戦争の時で、北朝鮮は釜山攻略に失敗しています。

 

国際線出発カウンター前。国際線出発カウンターは、画面に写っているのがすべて。国内線ターミナルのように、カウンター数は基本的に少ない。チェックインがパンクするのは日常茶飯事であったため、早い時期から、自動チェックイン端末の整備が進んだ。現在は、チェックインは自動チェックイン端末で。荷物預託はカウンターでという流れになっている。レストランはかつて、まずい、遅い、高いの三拍子揃ったあまりにも貧弱な内容で、クレームも相次いだため、現在、大規模な改修が進められている。既存の店舗でも、大幅に味とサービスが改善されている。まだまだという意見もないわけではないが。

 

軟弱地盤地帯ゆえ、釜山市街地に隣接しているものの、手つかずだった

現在、金海国際空港の立地している場所は、釜山中心市街地に隣接してはいますが、長らく未開発地でした。

ここは、洛東江の三角州なのですが、砂利や川砂が堆積することの多い日本の河川と違って、洛東江の三角州は、泥やシルトという細かい砂が堆積しています。
軽電鉄からみればわかりますが、洛東江の水位は常時高く、いつも堤防スレスレです。
そのため、ひとたび雨が降ればすぐに冠水し、泥沼となるうえ、いつまでも水が引かない排水の悪い軟弱地盤地帯でした。

穴を掘れば、1mも掘らないうちに穴が水没するというとんでもない土地です。
農地にするにしても、植えた作物は次々と根腐れし、建物を建てるにしても、土台を据えようと穴を掘れば、水が湧いて、コンクリートが打設できないというものすごさ。

朴正煕大統領の時代、韓国の土木技術の向上により、排水施設を整備して、どうにかこうにか手を出せるようになり、地形の関係で拡張が難しかった釜山飛行場に代わって建設されたのが金海国際空港でした。

 

地下鉄すら乗り入れられなかった軟弱地盤

釜山地下鉄2号線が空港近くを走っていますが、空港に乗り入れられなかったのは、穴を掘れば、1mも掘らないうちに穴が水没するというとんでもない土地であるがゆえに、コンクリートが打設できなかったからという理由があります。
そのため、釜山地下鉄2号線沙上駅から、路面電車ぐらいの大きさの2両編成の電車が高架線を走る軽電鉄が空港に乗り入れています。

軽電鉄は、もともと、空港鉄道として計画されたものでありましたが、軟弱地盤地帯ゆえ、道路整備が遅れに遅れた地域を走る鉄道だけに、今でもこのあたりでは、地域最速の交通手段です。それゆえ、地元住民の要望から、延伸が続き、21駅、23.9kmという堂々たる長距離路線となっています。

 

国際線出発制限エリア内。手荷物検査、出国審査が終わった先がここ。これがすべて。高速バスターミナルの待合所とさほど差はない。こじんまりとした免税店があり、軽食堂も2店舗ぐらいある。旅客の多さのわりに、免税店が貧弱すぎるという話は昔からあり、現在、鋭意増設工事中。あの国内最大手免税店のロッテ免税店ですら、待合室の通路にショーケースをおいて、露天営業中っていうのだから、以前の貧弱さは、国際線空港にあるまじきレベルであった。しかし、この貧弱な接客設備の空港にあって、頼りになるのがコンビニ。新宿バスタのコンビニ並の猛烈な盛況ぶりで、いついっても、店の入り口にダンボールを満載した荷物搬入用カゴが大量に置かれている。ここで販売されるものは、すべて国外輸出手続きとセキュリティーチェックを済ませないといけないので、欠品したからといって、すぐに発注できないものらしい。みんな、飛行機で飲み食いするものをコンビニで買ってから飛行機に乗る。ちなみに、ここのコンビニは免税店なので(ここは保税地域であるため)、韓国版消費税(付加価値税)10%がかからないので、なにげに、全商品お買い得。

 

制限区画内のコンビニ。ロイヤリティー料が非常に高額な日系(セブンイレブン等)から、ロイヤリティー料が安価な韓国系(CU等)に変更となるケースが相次ぐ。セブン銀行ATMが使えるわけではないし、同じセブンイレブンでも、お弁当、惣菜などの品揃えが日本と韓国ではまったく異なるので、韓国でセブンイレブンにあえてこだわる理由もないのだけれど。以前は、コンビニの上の壁がなく、コンビニの天井に荷物が置けたので、コンビニの天井を荷捌きスペースにしていたが、壁が設置されてしまったため、荷捌きスペースがなくなって、店の前で荷捌きするようになってしまった。こういう現場を知らない管理者が原因の職場環境改悪は、韓国あるあるであるが。

 

おかげで、空港施設は必要最小限にせざるをえなかった

また、まともに基礎工事ができない土地であるがゆえに、立派で重量のある建物を建てることができず、不等沈下する恐れがあるため、空港のターミナルビルも必要最小限とせざるをえませんでした。
国内線のターミナルビルが台形をしているのも、国際線のターミナルビルが軽量鉄骨造りなのも軟弱地盤対策によるものです。

必然的に、ターミナルビルはコンパクトです。

手荷物検査や出国審査を終えると、搭乗ゲートまで、最も遠いゲートでも歩いて3分というぐあい。
国際線と国内線は、ターミナルビルが別ですが、この間の移動は無料シャトルバスがあるとはいうものの、建物自体が隣接しているので、歩いても100m程度と、ごく至近距離にあります。

大空港仁川国際空港とは対極にあるような小さな空港です。

 

搭乗までの時間が短いのが金海国際空港の人気のポイント

搭乗までの時間が短くて、時間が読める点が金海国際空港の人気のポイントで、金海国際空港を発着する国際線は増加の一途で、利用者も増加の一途となっています。

出発の際、頼りになるのは、手荷物検査後の制限区画で営業しているコンビニです。
大部分の旅客は、コンビニで、飛行機の中で飲み食いするものを調達してから飛行機に乗ります。
バスタ新宿から高速バスに乗るみたいな感覚ですね。
旅慣れた人には、このぐらいの気軽さがいいのです。

もっとも、日本に帰国したとき、気をつけたいのが、食べ残し。
ハムサンド、カツサンドを買って、飛行機の中で食べたのはよかったものの、食べきれず、食べ残して、飛行機を降りてしまうと、検疫法違反の現行犯となってしまいます。

特に、金海空港からの到着便に関しては、この食べ残しが原因の検疫法違反が多いらしく、日本の空港では、金海空港便の荷物受け取りターンテーブルに探知犬が重点配備されるようです。

かわいい犬が来たなと思ったら、ワンと吠えられて、

「ちょっといいですか?荷物を拝見、いや、大きい方じゃなくて、肩にかけているバッグの方をみせていただけますか?」

「ああ、食べ残しですね?ダメですよ、確かにゴミですけど、家に持って帰ったら、検疫法違反になりますから。ここで放棄しますか?」

「すいませんが、あちらで、書類(始末書)を書いてください」

となります。
交通違反赤切符交付された・・・みたいな感じになります。

金海空港到着の際は、とっとと軽電鉄で釜山市街に出た方がよいです。
ターミナルビルでは、一応、レストランなどが数店舗営業してはいるものの、仁川国際空港のように名店揃いというわけではないので、空港で待つ用事でもなければ、空港で食事をしてから出発という人は少ないです。

釜山市街地(沙山)まで軽電鉄で3駅という好立地なので、沙山駅まで軽電鉄で行って、駅前の釜山西部市外バスターミナル2階のフードコートに行った方がおいしいご飯が食べられます。
釜山西部市外バスターミナルには、この他にも釜山でも人気のあるAppleアウトレットがあって、衣料品中心になりますが、お土産になりそうなものが買えます。

 

写真はすこし古く、軽電鉄開通前の金海国際空港。手前が国内線ターミナルビル。奥が国際線ターミナルビル。この時代は、沙山の開発が進展しておらず、亀浦駅が釜山西部の拠点地域であった。金海国際空港へは、亀浦駅から釜山市内バスに乗る必要があった。金海国際空港行きのバスは、制服を着た客室乗務員が列をつくっているのですぐにわかった。市内バスは、洛東江を越えると、途中、畑や町工場に紛れて建っている航空会社のプレハブ事務所(?)の前に順次停車しながら、空港ターミナルビルへ向かった。航空会社といえども、要するに運送会社なんだと妙に納得した記憶がある。

 

もとは国内線のための空港

金海国際空港は、もともと、韓国国内線のための空港でした。
狭い国土なのに、なぜ飛行機の国内線が必要だったのかというと、他の交通機関があまりにも貧弱だったからです。

かつて鉄道は、鈍足の客車列車であり、東京-米原間ぐらいの距離を、6〜8時間くらいかけて走っていました。

高速バスは、それより速かったのですが、いかんせん渋滞に巻き込まれることもしばしばあって、5〜6時間くらいかけて走っていました。
そこを、飛行機の場合だと、待ち時間や、空港までの移動時間込みで、3〜4時間程度で移動できたのですから、飛行機で韓国国内を移動することがわりと普通だったのです。

金浦国際空港と金海国際空港の間を、15分間隔ぐらいで国内線が飛び交っていました。
この旺盛な航空需要が、今日の韓国の航空産業を形成したともいえます。

現在のKTX(高速鉄道)の走行速度、運行間隔は、概ね、飛行機がソウル-釜山間の移動の主力だった時代の輸送量、移動時間にもとづいて設定されており、ソウル-釜山間の移動時間が飛行機で行く場合と同じになるようになっています。

そのため、KTX開業により、韓国国内線の主力は、ソウル-釜山間から、鉄道や高速道路では行けない済州島行きの便となり、その関係で空いた発着容量の分を日本、中国、台湾といった近距離国際線に振り向けられるようになりました。
ことに、国内線の発着が大幅に減少した金海国際空港にあっては、国際線の比重が大きくなってきています。