大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

迷の要素の目立つソウル高速バスターミナル

韓国初の大規模旅客ターミナルのハズであったが・・・

鉄道の旅客輸送を代替えすべく、それまで江北に複数あったバスターミナルを統合し、国営事業として1976年に、現在地に仮設バスターミナルが開業。
1980年9月19日にソウル高速バスターミナルとして開業しました。

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開業時の高速バスターミナルの写真。
韓国における高速バスは、それまで鉄道が行っていた都市間の旅客輸送を代替えする特殊な路線バスで、観光バス仕様のバスによって運行されていた。市内バス仕様のバスが長距離運行する一般の乗合バスとは一線を画していた。高速バスターミナルのそばに、京釜高速道路のソウル側終点が設置された。なお、高速バスができると、それまでの長距離一般乗合バスも観光バス化し、『市外バス』を名乗るようになった。市外バスも高速道路を直通運転するようになったため、高速バスと市外バスは、発着ターミナルが違うという点を除き、違いはほとんどなくなった。国の事業とは無関係にゲリラ的に路線網を拡大してきた市外バスは、高速バスターミナルからは発着できなかった。

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高速バスターミナル開業前に、高速バスターミナル予定地にあった仮設バスターミナル。この写真の時期には、現在の地下商店街の工事は開始されている

 

東大門高速バスターミナル。このバスターミナルのすぐ横に、広蔵市場の場外市場が、夜間営業の形態でオープンしたことが東大門市場のはじまり。高速バスは今も昔も昼行ONLYのため、ソウル滞在の時間を有効に使える夜間営業の市場の存在価値が高かった。1980年頃、道路拡幅及び地下鉄4号線工事に伴い、江南の高速バスターミナルに移転し、現在は道路になっている。隣接する東大門総合市場ビルは健在。江南に高速バスターミナルが開業する前は、ソウル各地に高速バスターミナルが分散していた。

 

韓国でも珍しい3階建の多層階式のバスターミナルとして登場

当時、バス乗り場は3階建てで、1階が京釜線、2階が湖南線、3階が到着線だったように思います。
その上階には食堂やら商店やら、管理事務所やらがあったということです。

韓国人の記憶も結構薄れてきているので、聞く人によっていろいろと違う説明をしてくれます。
あのピラミッドのような変わった形の建物は、どうしても下層に行くほど人の混雑が激しくなるので、下層ほど広く作った結果ということのようです。

 

 

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現在隣接して存在するソウルセントラル(ソウル江南)バスターミナルは未着工で、穴があるだけであった

 

先進的大規模旅客ターミナルを混乱させた運転士のブラックな勤務環境

さて、韓国のバス運転士のブラックな勤務環境は今も昔も変わりません。
基本的にバス会社は出発地にしか営業所を持っていません。
高速バスの起点は基本的に地方都市。
折り返し地は大抵ソウルなんですが、そこには、基本的に営業所も待機用駐車場もありません。

折り返し時の駐車場の確保と、食事、仮眠所の確保は、全部運転手せ(費用負担も運転手の自腹)。
ホテルに自腹宿泊するだけでもきついのに、バスの駐車料が運転手の自腹では、給料がいくらあっても足りません。

周辺の住宅地の道路という道路は路上駐車のバスだらけ。
それでも駐車場所にあぶれたバスが漢江の河川敷に駐車して、そこで運転手が仮眠するようになってしまいました。

もともと、江南の住宅街は、高額所得者の家が多かった関係で、乗用車の路上駐車が洒落にならないぐらい多かったのですが、そこに百数十台のバスが加わったため、シャレにならない事態になってしまいました。

 

警察はバスの路上駐車を取り締まらないのか?

警察が路上駐車を取り締まることにはなっていたのですが、罰金よりバスの駐車料がはるかに高額というソウル江南。
罰金払ったって、違法駐車するに決まってますがな。

今は相当運転手の給与が下がっていますが、昔の長距離バス運転士といえば、下手な銀行員より高給取りだったのであります。
出身家系が悪いと、絶対に高給取りにはなれない韓国にあって、バス運転士は例外中の例外。
才覚のある下層国民が、腕一本、裸一貫でのしあがってきたというケースが多く、荒くれ者揃いという点で有名でした。

ちなみに、駐車違反を取締る警察は、出身家系が良くないとなれない職業。
とはいえ、薄給かつ、給料の遅配欠配は当たり前の公務員。
するとどうなるか?
生活のために、運転手からおこづかい(賄賂)をもらって、路上駐車を黙認するに決まってますがな。

日本では、公務員給与が優遇されているのはけしからんということで、年々公務員給与の切り崩しが進んでいますが、給与切り崩しが原因で、収賄・便宜供与天国となった韓国では、基本、公務員給与の切り崩しはタブーなのであります。
何事もやりすぎると、ろくなことがありません。

 

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現在の高速バスターミナル本棟乗り場は京釜高速線のみと小規模になってしまっているが(他に別棟の嶺東線乗り場があるが)、広大な駐車場は健在。駐車場の狭い東ソウル総合バスターミナルからの回送も多々ある。2階建の駐車場になっている部分の下には、修理工場もある。

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軍事独裁、厳しい言論統制、反対運動完全無視が混乱に拍車をかけ・・・

軍事独裁政権下、厳しい言論統制のもと、反対運動など完全無視で高速道路の整備が猛烈な勢いで進みました。
高速バス、市外バスとも、長距離バスが激増したため、高速バスターミナル周辺のバスの路上駐車も激増し、警察は、取り締まりよりも、おこづかい稼ぎで大儲け大忙しの事態。

政府、警察官、バス運転手の三方よしの奇妙なバランスが成り立ち、近隣住人の大迷惑をよそに、誰も改善しようという動きをみせませんでした。
ですが、何事にも限度というものがあります。
高速バスターミナルの発着容量を大幅に超過し、バスの発着もままならない事態となって、周辺の道路でバスの発着を捌く有様でした(その時の名残りで、現在も空港バスはターミナル前の道路で捌いている)。

 

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看板だけが現代韓国風のおしゃれなデザインになっているが、無骨な建物のデザインとはミスマッチで、朴正煕時代の建物の無骨さをより際立たせている。
朴正煕時代の建物は、日本の建物のデザイン以上に質実剛健であることが多い。
もともとこの建物は非冷房で、天井は高く作ってあったそうだが、余剰スペースを活用して、現在はエアコンが設置されているため、天井は低い。

現在は、京釜高速線だけがここを発着している。

 

2000年に隣接地にソウル・セントラル・バスターミナルが開業

そんなわけで、隣接地にバスターミナルとホテルとデパートが合体したセントラルシティーが2000年に開業し、ゲリラ営業が目立った市外バス全線と、混雑の原因だった発着本数がべらぼうに多い湖南線がこちらに集約・移管されました。バスの巨大な駐車場もセントラルシティーの敷地に整備され、適正価格の駐車料と路上駐車取締とセットで整備されました。

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現在は人の気配のない大階段だが、1999年までは、バスの乗降客でごったがえしていた。こういう無骨で実務一辺倒なつくりは、この建物が作られた朴正煕時代を彷彿とさせる。

 

2000年、国営高速バスターミナルは、貸しビル業に転換

と同時に、元の高速バスターミナルの2階、3階の乗車口を閉鎖。
2階、3階の乗車口を大改造して、花卉市場、婚礼用品市場になりました。
さらに上層階の食堂や事務所などは1階の元バス発着場に降りてきて、バス発着場は建物の外へ。
空いたスペースはオフィスビルに改装されているようです。

国営のバスターミナルが、貸しビル業に転換というのも、韓国ならでは。
おこづかい(賄賂)稼ぎで、妙に商売経験が豊富であった当時の公務員ならではの発想といえなくもありません。

そんなわけで、ソウル高速バスターミナルに行くと、今も建物の中央に大階段が残っていて、上層階へ行けるようになっています。
行っていけないわけではないのですが、上層階へ行ってみると、おおよそ旅行とは関係のない事務所が多数入居しており、閑散として、びっくりします。

それと、ビルの構造上、下からは絶対見えないテラスには、従業員が勝手に置いたと思われる長椅子や灰皿が多数あって、隣のセントラル・シティーの食堂の窓(熱線防止フィルムが貼ってあって、外から中は見えない)からみていると、従業員がサボっているのがよく見えます。

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現在の高速バスターミナル。
ターミナル内の発着は、京釜高速線のみ。すぐ下の二階建ての乗降場に嶺東線、ターミナル前の道路に空港線が発着する。
かつての2階、3階のバス乗り場は壁で塞がれ、階の真ん中で増床しているため、もともと8階建てだったのが現在11階建てになってる。