ともあれ、ソウルで多発するボッタクリ、タクシー詐欺撲滅に乗り出した韓国政府
模範タクシー制度創設
模範タクシー(無印)。実際には、インターナショナルタクシーをやっている模範タクシーが多いので、無印模範タクシーはめずらしい。
多発するボッタクリ、タクシー詐欺(本当に詐欺かどうかは怪しいものだが)に業を煮やした政府が行った施策が、模範タクシー制度の創設でした。
これは、10年間無事故無違反のドライバーは、一般タクシーの約2倍の料金で営業してよいという制度(日本のタクシーとほぼ同程度の運賃)。
模範タクシーは、専用車を使用することが条件となっていて、黒色の専用車両を使用しています。
模範タクシーは、ソウル市内を流し営業していることは稀で、だいたい、有名ホテルとか、空港で客待ちしています。
模範タクシー制度の問題点は、タクシー運転手にとって、メリットが少ないこと。
特に、韓国で10年もタクシードライバーをしているとなると、リピーター客を多く抱えている個人タクシーとなってきますから、模範タクシーがそれ以上のメリットがないと、積極的にやる意味がありません。
そして、やはり、以下の点が問題となってきます。
- 一般個人タクシーより売上が伸びづらい
- 客が選べない(迷惑客の恰好のターゲットになりやすい)
- 乗客からのクレームにより、容易に資格が剥奪される
喧嘩上等、トラブルを起こす気満々の迷惑客に狙われた場合、目立つ模範タクシーは、恰好の吊し上げターゲットなので、被害が甚大なものになってきます。
何年経っても固定客のつかない個人タクシー運転手は少なからずいるので、そういう運転手にとっては、模範タクシーは魅力があるかもしれません。
しかし、迷惑客リスクが極端に少ないリピーター客を多く抱えている個人タクシーがあえて模範タクシーをやるかといわれれば、やらないでしょう。
迷惑客リスクが少ない「インターナショナルタクシー」は、タクシー運転手にメリットが多い
「インターナショナルタクシー」は、外国語OKの一般タクシーや模範タクシーのことを指します。
なにより韓国のタクシー運転手が極度に嫌う迷惑客リスクを下げる最も効果的な方法は、客を外国人観光客に絞ること。
韓国人を乗せる限り、迷惑客リスクが高い問題があるなんて正面切って言っていいんかいと思うところですが、そういう忖度というものが何より嫌いなのが韓国人です。
忖度ズブズブの日本人とは違います。
一般インターナショナルタクシー
一般インターナショナルタクシーの表示ルール。中型が普通サイズである。
ちなみに法律上は排気量1600cc未満の小型タクシーもあるが、インターナショナルタクシーには存在しないし、一般タクシーでも小型タクシーはソウルではみかけない。韓国車で1600cc未満の普通自動車というと、よほどの旧車か、日本の360cc軽自動車並の小さい自動車になるので、タクシー営業には適さない。1600cc以下のエンジンで、軽々動かすことのできる大きなボディーを作ることができないのが韓国の自動車製造技術レベルなのである。韓国車は、大排気量エンジンでアメ車並に重いボディーを強引に動かすようになっており、だいたい、日本車の2倍ぐらいの重量がある。
他に、排気量2800cc以上の高級タクシーという分類もあるが、インターナショナルタクシーには存在しない。韓国で排気量2800cc以上の乗用車というと、トヨタのレクサスになってくるのだが、レクサスでタクシー営業をしている感じ。運賃は、模範タクシー運賃+7000ウォンという感じ。
模範インターナショナルタクシー。
模範インターナショナルタクシーの表示ルール。模範タクシーは無印でも2000cc以上の普通自動車を使用することになっているため、インターナショナルタクシーも2000cc以上の普通自動車を使用する。ブランド模範は、ソウル市ブランドコールタクシー加盟社の模範タクシーで、大手4社「ナビコール」(SKエネルギー)、「Kタクシー」(KT)、「Nコール」(東部エキスプレス)、「インターナショナルタクシー(紛らわしいことに、大手タクシー会社名でもインターナショナルがあるってところが韓国らしい)」など。その他は一般模範になる。
大型インターナショナルタクシー。迎車専用で、事前に行き先や行程を配車掛かりに告げて利用するハイヤーの一種と思ってもらったらよい。流しで営業していることはないと思ってもらったらよい。というのも、料金は模範タクシーと同じ。9人乗り乗用車を使用する関係で、短距離の営業では、中型タクシーと比べて、タクシー会社にとっては儲けが少ない。空港やホテル迎車など、客単価が見込める場所にしか出没しない。
ハイヤーの一種的な扱いなので、表示ルールも非常にシンプルなのだが、これに目を付けたならず者が偽装タクシーを営業するケースが跡を絶たない。流しで営業している大型タクシーはすべて偽装タクシーと思って差し支えない。
無印の一般タクシーや模範タクシーでは、迷惑客リスクの高さが問題となるのですが、「インターナショナルタクシー」なら、空港、ホテル、ソウル駅など、比較的優良客の多い乗り場に優先的に付けることができます。
行き先さえ間違わなければ、外国人客は、ソウルの詳しい地理を知らないこともあり、無茶な近道を要求されたり、抜け道を通らず大通りを通ったがために、遠回りしたといってクレームになることは少ないです。
また、気違いじみた執拗なクレームをいれることができるほど、辞書にも教科書にも載っていない汚い韓国語に通じた外国人は稀なので、常識的なタクシー営業が期待できます。
インターナショナルタクシーをやるには、専用塗装の営業車両や、ある程度の接客レベル、ある程度の外国語能力が必要なので、ハードルは高いですが、ベテランタクシー運転手で、なろうとする人は多いようです。
こちらは、ホテルや空港で呼び出してもらう使い方が一般的ですが、迎車予約が途絶える時間帯になると、ソウル駅など比較的優良客の多い乗り場で付け待ちしていることが多々あります。
せっかく迷惑客リスクが少ない「インターナショナルタクシー」をやっているんですから、明洞や南大門市場前で付け待ちするよりは、ソウル駅西口のタクシー乗り場に並んで優良客を狙うに決まってます。
偽装タクシーが韓国で最も多く出没するのは、深夜の東大門市場でも、深夜の江南周辺でも、深夜の弘大入口でもなく(いるにはいるのだが)、真っ昼間の仁川国際空港である。それゆえ、タクシーを使うなら、タクシーカウンターを探そう。ここでタクシーを手配すると、迎車扱いになり、空港定額運賃が適用となる。空港定額のいいところは、通行止めや渋滞などでタクシーが迂回運転を行っても料金が変わらないところにある。
料金制は大きく以下の2タイプあります。
1.メーター料金制(普通に乗る場合)
一般タクシーは、一般タクシー運賃の20%増。模範タクシーは、模範タクシー運賃そのまま
2.定額料金制(区間料金制/貸切料金制)
定額料金制には区間料金と貸切料金の2パターンがあります。
区間料金は、ソウル市内縦移動は比較的安い半面、ソウル市内横移動は比較的高くなる傾向があります。
貸切料金は、時間制と、1日単位の貸切があります。
待ち時間については、一般タクシー運賃の時間制料金の20%増。
基本、空港タクシーカウンターで配車してもらうか、利用の24時間前までに迎車を依頼する必要があります。
ホテルのコンシェルジュに配車してもらう場合も、利用の前日までに手配を依頼する必要があると考えてください。
迎車依頼は、専用コールセンター(電話・日本語OK)か、ホームページから日本語で予約が可能です。
インターナショナルタクシー配車予約ホームページ。安くはないけど、ハイヤーを手配するつもりで予約するなら、結構使える。
ハイヤーというのは、基本的に予め時間や目的地や行程を配車掛かりに伝え、料金交渉まで事前に済ませて乗る特別なタクシーのような乗り物。よく、タクシーとハイヤーを混同している人がいて、大会社の社長がハイヤーに無言で乗って無言で降りるのを格好いいと思って、タクシーでそれを真似してトラブルを起こす。タクシーは、乗車時に目的地や行程を運転手に伝えて、着いてから料金を出たとこ勝負で払うもの。
大会社の社長がハイヤーに乗るのは、出たとこ勝負で料金を払うなんて勝手なこと、会社の会計上許されないし、乗る前に料金交渉までやることをすべてやっているから、特にやることがないので無言なだけ。
営業効率の上がる「KAKAOタクシー」は、タクシー会社にメリットが多い
ソウルではこの3つの他に、配車サービス専門の「KAKAOタクシー」があります。
これは、日本のGOアプリで迎車するタクシーと同じで、アプリが日本なら「GO」とか「S-ride」とかですが、韓国ならアプリは「KAKAO」になります。
日本のスマホアプリにも「KAKAO」はありますが、日本の「KAKAO」にはタクシー呼び出し機能はありません。
韓国で契約したスマホでないと、この機能は使えないので、日本人が使うことは今のところ難しいです。
韓国でSIMカードを購入する場合は、「KAKAOタクシー」が使用できます。
KAKAOは、タクシーの走行経路を勘案して、タクシーが効率よく走行できるように客のオーダーを整理して、タクシー配車を行うようになっていることから、単位時間あたりの実車率を飛躍的に高めることができます。
そこで、「KAKAOタクシー」を導入するタクシー会社は増加傾向にあります。
ただし、問題点は以下の2点
- ナビが不正確で、不適切なルート案内をすることが多い
- 迷惑客リスクが少ないわけではない(概して、流しの一般タクシーより高め)
やはり、迷惑客リスクは、韓国のタクシー運転手に極度に嫌われる傾向があり、「KAKAOタクシー」は、法人タクシーでの普及はめざましいものがある半面、激辛パワハラ修行期間を卒業して悠々自適なドライバーがやる個人タクシーでは、それほど普及していない印象です。
カカオタクシー。タクシーがつかまえやすくなったとの評判である。ただし、呼び出す位置が悪いと、他の人に間違って乗られる、到着が大幅に遅れる、タクシーがとんでもない位置で待っていたなど、トラブルの原因にもなる。韓国ナビは、誤差が100メートル程度あるのが普通なので、だいたいの呼び出し位置にタクシーが到着すると、あとは運転手の勘で乗客を探す。ところが、呼び出し位置が、タクシーを呼ぶ人が多数いる人混みだったり、バス停の中だったり、タクシー乗り場近辺だったりすると、正しく客を乗せることができないのだ。他にタクシーを呼ぶ人のいない路駐が物理的に可能な目立つ場所にタクシーを呼ぶ必要がある。
ソウルでは、他にも以上のようなタクシーがある。広告上では、タクシー車内サービスの違いをアピールしているが、それほど差はない。
一番の違いは登録車数の違い。登録車が多ければ、捕まえやすい。そういう点ではカカオがトップである。
それと、タクシーアプリの品質の差が非常に大きい。特にナビ性能、料金支払操作の煩雑さはアプリによって大きく違う。
ウーバーは、日本同様、相当癖のある社風で、受託タクシー会社の負担が大きいので登録車が伸び悩んでいるのだが、ナビ性能の高さと料金支払いのシンプルさで定評がある。
アプリタクシー配車では、通常、優良客と迷惑客の選別は特に行わないが、ウーバーでは、優良客と迷惑客を点数化して、優良客には客の好みを反映した優良車両を優先配車する一方、迷惑客へは営業態度の悪い車両を配車するか、ひどい場合は配車を拒否するようになっている。乗客の乗車態度が点数化されて評価される点もウーバーが敬遠される要因の一つである。
功罪相半ば、タクシー新メーター
ソウルのタクシーでボッタクリの被害が多いという噂は、非常に有名ですが、そのうち、運転手のタクシーメーターの操作ミスの占める割合はかなり多いです。
タクシー運転手の平均経験年数が1年未満なのですから、タクシーメーターの操作ミスはないほうがおかしい。
そこで、運転手がタクシーメーターに触らなくても、自動でタクシーメーターが起動し、タクシー営業の料金計算をするような新しいタクシーメーターが導入されつつあります。
これは、法人タクシーでは比較的早く導入されていますが、個人タクシーでは普及速度は遅いです。
どうしてそうなるのかというと、やはり、これまた、大韓民国クオリティーの自動メーターであるがゆえに、ベテランほど導入に慎重という事情があるのです。
大韓民国クオリティーの当てにならないナビで道を走れば、さほど走らないうちに、間違ったルートに案内されますが、そういうとき、古いメーターの場合、運転手の独断でメーターを切って運賃調整をすることはよくあります。
日本のタクシーの場合、運転手の独断で運賃調整をした場合、懲戒処分になりますし(ドラレコ解析で、客の態度が悪かった記録がある場合は不問となる)、そもそも、メーターが簡単に運賃調整できないようになっています。
ただし、日本のタクシーのナビの精度は万全とはいえないまでも、そこそこ高いですし、メーターの精度は、銀行ATM並に高精度なので、それで問題が起きないわけです。
大韓民国クオリティーの当てにならないナビと、大韓民国クオリティーの融通の効かない自動メーターが組み合わさるとどうなるか?
そうすると、期せずして、ボッタクリ運賃がメーターに表示されてしまうという本末転倒な問題が起こってしまうのです。
旧メーター。日本のタクシーと似たりよったり。日本のタクシーとの違いは、営業区域外料金切り替えがあるところ。日本のタクシー料金には、営業区域外料金がない。ソウルから空港へ行く場合、空港定額料金を使わなければ、距離制運賃となり、営業区域外料金として、30%の割増適用となる。旧メーター車は、現金支払いがメインで、交通カードとクレジットカードを使うことができる。
新メーター。デカデカと表示されているが、新メーター車は、原則交通カード専用車(クレジットカード可)になる。とはいえ、営業上の理由で、現金の扱いをしているが、あくまで運転手の個人的サービスであって、釣り銭がないことが結構ある。