大韓民国観察記Neo

韓国の、どうでもいい、重箱の隅をつつくブログ。

韓国人でも知らない人が多い塩辛(魚醤)の秘密

韓国料理の味のベースといえば、塩辛(魚醤)

とはいえ、最近の韓国人で、その臭いから嫌いという人は多い

韓国料理の濃厚なうまみのもととなっているのが塩辛(魚醤)。
韓国では、魚醤が現在でも生き残り、現在でも魚醤が盛んに作られています。
ただし、魚醤は臭いという欠点があって、韓国料理が嫌いという人の最大の理由も、韓国料理は臭いという点に集約されます。
なにも日本人だけが韓国料理を嫌うというわけではなく、韓国人の中にも、臭いから韓国料理が嫌いという人は大勢いて、比較的臭いの少ない日本食(日式:とんかつとか、すきやきとか、しゃぶしゃぶとか)を好む韓国人は大勢います。

日本でも、かつては、魚醤がごく一般的な調味料として使われていました。
現在でも、秋田の「しょっつる」などの形で残っています。
魚醤が廃れた最大の理由は、良い品質の物をつくるのにはとても時間がかかることと、製造期間を短縮したものについては、ウ●コやオ●ッコと変わらぬ悪臭が発生するためであります。

三夏も寝かせた魚醤の芳醇さといったら、比類なきすばらしさですが、1本 700ml 200円前後の大豆醤油だって、三夏も寝かせたものは、2000円ぐらいする超高級品です。
そんな悠長なことをやっていたらメーカーは儲からないといわれています。

作るものは違いますが、真面目に12年もウイスキーを寝かすニッカとかサントリーとかが慢性的な赤字企業で株式公開していないというのは、それなりの理由があります。

それと、魚醤は鍋物、焼き物の味付けには向くのですが、刺身に直接つけて食べるというような使い方ができません。
うどん、そばの汁を作るのにも向きません。
日本の食生活のなかで、生魚・生寿司、そば、うどんといったものが普及し始める安土桃山時代頃を境に、魚醤が廃れ、大豆醤油が普及しはじめる傾向がみられます。

 

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ミョルチチョッカル(鰯の塩辛)
みてのとおり、完全なる魚醤。
慶尚南道の釜山機張産が最高。
慶尚南道以外の韓国人にこれを『チョッカル』と言って見せたら、ビックリされた。
どうも、一般韓国人の『チョッカル』のイメージと違うらしい。

 

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ソウルの市場でよく『ミョルチチョッカル(鰯の塩辛)』として売っているもの
一般韓国人の『チョッカル』のイメージはこんなの。
慶尚南道人にしてみれば、これは、作りかけに過ぎず、作りかけをこんな平積みにされたら、雑菌が入るんで、捨てるしかない。
きちんと密閉可能な容器で(ガス抜き機構は必要)完全に液体化するまで蓋を空けてはいけない。
強いてキムチを作る時使えないことはないけれど、使いたくないなあ。
ミョルチチョッカル(鰯の塩辛)は、雑菌が入ると味が滅茶苦茶になるんで。

 

一般的な一年物の魚醤の作り方(慶尚南道式)

韓国の正統な魚醤でもっとも有名なのは、イワシ魚醤、タチウオ魚醤で、主に、慶尚南道で作られています。イシモチの魚醤もありますが、高価です。
イワシやタチウオの重量の30%の塩を加え、一夏寝かせます。

三年寝かせれば、芳醇な魚醤ができますが、保存容器の置き場所の関係で、一夏寝かせるのが精一杯。
秋になると、醤油のような色の液体になるので、さらし木綿布で骨を濾して、鍋で沸騰させ発酵を止め、完成します。

一年物の発酵止め処理中の悪臭たるや、韓国人をして『毒ガステロ』と言わしめるほどのもので、決して家の中でやってはいけません。
カセットコンロを屋外に持ち出して屋外でやるのが無難なのですが、近隣住民の通報で警察が出動する事態に至ることもあります。

できあがった魚醤も、一年物の場合、味や香りのクセは相当強いものになります。

 

慶尚南道式の魚醤の悪臭に耐えられなかったソウル人の編み出した『小エビの塩辛』

一般の韓国人、特に典型的都会人であるソウル人にとって、慶尚南道の魚醤の悪臭は耐え難いのであります。

そこで、魚醤とは似ても似つかぬ『小エビの塩辛』という代替品を魚醤の代わりに使います。

『小エビの塩辛』とは、『アミの塩辛』『セウジョッ』とかいいますが、正式名称は『セウジョッカル』。
『チョッカル』というぐらいですから魚醤の一種で、昔は一年ぐらいかけて臭いものを作っていました。

こいつのいいところは、1日程度置いた新鮮なものでも結構おいしいというところ。

これをつまみにすると、酒が甘くなり、グイグイ進みます。

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小エビの塩辛『セウジョッカル』
調味料として結構優秀。これをつまみにすると、酒が甘くなり、グイグイ進む。

現在では、アキアミ、ナンキョクオキアミなどの小エビに重量の30%の塩を加え1日程度置いた新鮮なものを使います。
生産は主に、慶尚南道とは極めつけ仲が悪い全羅南道で行われています。

新鮮な『小エビの塩辛』は、やや金属臭のある塩味が特徴で、単体では塩辛いだけです。

しかし、塩の代わりに使うと、他の素材の味を劇的に改善する効果があり、悪臭を極度に嫌うソウルの人達の作る韓国味噌汁の味のベースとなっています。
(最近の若い衆で、『小エビの塩辛』を入れず、間抜けな味の韓国味噌汁を作る人も増加中ではある)

 

『小エビの塩辛』は、実は、隠し味として、既に多くの日本人が食べている

実は『小エビの塩辛』、または『アミの塩辛』。
日本の人気ラーメン店では、非常によく知られた隠し味で、ほんの少し混ぜることで、スープの味を劇的に改善します。

これを使う人気料理店は韓国料理店だけではなく、和食、洋食を問わず非常に多く、これがないと、日本の外食産業が崩壊するともいわれているものです。
日本でもいいものを作れるんだけど、なぜか、韓国からの輸入が多いんですよね。

塩分が非常に多いので、『小エビの塩辛』は常温保存しても腐りませんが、発酵がほんの少しでも進むと悪臭を放つようになるので、冷凍庫に入れ、いつまでも新鮮な状態を保つのが良いと言われています。
30%も塩分があるので冷凍庫に入れても凍りません。

 

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日本で俗に『チャンジャ』と言われている『チャンランジョッ』(ボラの内蔵)
これも、もとはボラの内蔵の魚醤だったのだが、キムチのヤンニョムで浅漬したものが酒のつまみとして最高だったので、魚醤から酒のつまみに変化したものらしい。
ちなみに、日本人が爆買いするまで、一般韓国人はまず知らない非常にマイナーな食べ物だったため、名前に混乱が生じたといわれる。
現在でも、空港の免税店の職員か、デパ地下の販売員でもない限り、『チャンランジョッ』を知らない韓国人は多い。