別名『水キムチ』
大根ではなく、漬け汁を使用するためのキムチです。
もちろん、大根は食べられます。
韓国の料理店では欠かせない『水キムチ』。
料理の付け合せにでる、塩味の液体です。
醗酵した大根の臭いと酸味があるので、とにかく韓国料理が嫌いというような人にはきついかもしれません。
日本にはまったく存在しない香味なので、初めて口にした人は、大なり小なり戸惑いますが、そうはいっても、慣れるとクセになる人がほとんどです。
最も古い形態のキムチで、結球白菜が登場する以前は、このようなキムチが食卓に上っていました。
味は、辛くもなく、生臭くもありません。
現在でも韓国の田舎に行くと、冬のキムチとして家庭の食卓に上ります。
むしろ都会では、めったなことでは食べることのできなくなったキムチでもあります。
(人気はあります)
トンチミは冷麺のスープの原材料として欠かすことのできないもので、韓国では、牛骨スープをトンチミでのばしたものを供するのが一般的です。
韓国人ですら作る人がかなり少なくなったトンチミですから、本場、韓国でも原料を完全に調達するのは難しいです。まして、日本で最高の冷麺を作りたいからといっても、なかなか、トンチミの副原料を調達できる状態とはいえず、そんなこともあって、日本の冷麺は、韓国の冷麺とはまったく比較にならない水準です。
もっとも、現在韓国で一般的な牛骨を使う冷麺のスープも、韓国人の好みにアレンジしたもので、もともと北朝鮮にあったものとは違います。
[主材料]
大根 10kg
韓国のトンチミ大根は、非常に硬く、生食できない。
また、繊維質の日本の青首大根とは異なり、粉質であるため、茹でて食べることができない。
茹でると、茹ですぎのジャガイモのように、ボロボロに崩れる。
漬物にして食べるぐらいしか食べる方法がなく、必然的にキムチ原料となる。
日本の青首大根は、生でよし、茹でてよしの万能タイプであるため、あえて面倒なトンチミにする動機に欠けるという問題はある。
塩 300g
[副材料]
梨 600g
長ネギの根 10本分
細ネギ 50g
からし菜 50g
ミル(海草) 生50g
(日本では食用にほとんど販売されていない 韓国ではチョンガッという)
にんにく 80g
ショウガ 60g
青唐辛子の塩漬け 100g
[漬け汁]
水 6リットル
塩 150g
ミル(チョンガッ)
副材料のミルは、海草の一種で、それ自体はほとんど味も素っ気もないものですが、キムチに入ると、俄然、韓国食品らしい風味を醸してくれます。
500円程度の安いものですが、効果は抜群。
ただし、韓国では、よほどキムチ作りに詳しい人しか使用しないものらしく、キムジャンの季節である11月だけスーパーの店頭で見ることができます。
ちなみに、私は韓国でよく乾燥ミルをまとめ買いして調達するのですが、スーパーの店員から、これは何に使うものか?と質問されたくらい、知られていません。
実際、韓国の家庭で作られたキムチは、ほとんどの場合、ミルを入れていないので、あの韓国らしい風味があることはまれで、唐辛子をまぶした日本の漬け物くらいの味であることがほとんどです。
1 漬け汁は少なくとも1日前に作り、塩を水に完全に溶解させた状態にしておく。韓国には、塩の結晶の大きな粗塩と、塩の結晶の小さな精製塩があるが、漬物では粗塩を使うことが多い。粗塩は安いからである。
2 韓国のトンチミ大根は長さが短く、非常に身が硬い。
3 大根の葉と葉の付け根は除去する。
4 洗浄。トンチミ大根は生ではかなり硬いため、たわしでゴシゴシ洗っても傷がつかない。
5 水気を切った大根に塩をまぶしてこする。粗塩を使うことの多い韓国ならではの工程
6 大根を甕にすきまなく詰める。
7 青唐辛子の塩漬け、細ネギ、ミルなどの副原料を準備する。
8 にんにく、ショウガを薄切りにし、長ネギの根と一緒に麻布に包む。
9 副原料をカメに詰める
10 梨は皮付きのまま洗い、箸で刺して穴を多数あける
11 大根が浮かんでこないように重石を入れる
12 カメに漬け汁を入れる
作り方は、濃い塩水で1回で漬けてしまいます。
日本の漬け物の作り方とまったく違います。完成品だけをみても真似ができないわけです。